――父さまは人殺しになるの?
「人を殺した者に死をもって報いる、これは多分、理屈ではない。それと同時に、人を殺してはいけない、殺したくないという思いも、やはり理屈ではないのだろう。国による殺刑は自己による殺人、ゆえになんとしてもそれだけは避けたい、と思う。......これはもちろん、私情に過ぎないのだが」
待ちに待った『十二国記』の新作は、他作品で傾きつつあると言われていた柳国のお話でした。
時代的にはおそらく『風の万里...』よりも前、まだ芳で過酷な刑罰が行われていた頃、つまり祥けいの父王が健在だった頃と思われます。
現王の登極から百年以上のあいだ死罪を凍結してきた柳国では、何がとは言えず、けれど不思議と違和感や齟齬がそこかしこで感じられはじめ、治安が悪化し、民も官も不安を抱きはじめていました。
そんななか、凶悪な連続殺人を犯して悔悛の兆しもない男・狩獺に死罪をという民の声が高まり、最終的な決断を下す役目を負うことになった瑛庚が主役。
国が傾きかけているいま死罪を復活させることが果たしていいことなのか、けれどここで禁固刑とすれば理解不能な狩獺という男の存在に不安を覚えている民をどうやって安んじるのか、というジレンマを抱えながら煩悶とし、どういう結論に行きつくかまでを描いています。
なんとも先行きが暗い。暗澹たる気持ちにさせられる終わり方でした。まあ設定からして当然か・・・。
前回の「yomyom」に掲載された短編『丕緒の鳥』と同じく、官吏目線のお話だったので柳国の王や麒麟はまったく登場しませんでしたが、どんな人たちで、どんなことを思っているのかなと興味がわいた。
『黄昏の岸』では、天というものに象徴されるような、絶対と思われているものも絶対ではなく様々な二律背反があり、その間で人も天もすべてが揺れているような印象を受けましたが、本作でも同じような感触を覚えました。
こういう迷いが、今後どんなふうに本編の展開に絡んでいくのか、とっても気になります。
前作『丕緒の鳥』から一年半でしたが、このペースでいいから続きが出続けてくれるといいなぁ。
小野不由美 『屍鬼』
沢村凛 『黄金の王 白銀の王』
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